人生最高の時はこれからだ



神は、若くなくても喜んで働く人を必要とされる。

Patricia Raybon




私はもう25歳ではなく、45歳でもなく、65歳でもありません。
でも神様は気にはなさいません。
月曜日には私の電話が鳴ります。メールの受信箱はいっぱいです。
やる事はたくさんあります。
聖書が言うとおり収穫は多いのです。神様が私に望まれる働きがあります。
年齢を重ねて最も驚くのは、神様は年齢など気にされないということです。
神様は喜んで働く人を必要とされます。
私の生活で最大の関心事は、髪を染めること、太ももを細くすること、若返りの注射をすることではありません。
ただ、たゆむことなく神様のために喜んで働こうとしているか、に尽きます。

私は自分のライフステージや年齢で葛藤したことがありません。
それは私が常に働き続けてきたからです。
年齢や人生の段階、召し、肌の色にかかわらず、働くことは魅力的で聖なるものです。
かつては人生の最高の時期とは能力と賜物によるのだと考えていましたが、最高の時期とは神様の私達への目的、そして私達がそのために喜んで働くかどうかによるとわかりました。
89歳のニューヨーク・ブルックリンに住む芸術家について、ニューヨークタイムズの最近の記事は「彼女の長生きの秘訣はよく働くことだ」というものでした。

幼い頃から父はこの原則を教えてくれました。父には息子がいませんでしたが、「娘たち」すなわち私達姉妹がいました。私達は黒人差別の残っていた1950年代に生まれました。黒人居住区で育った私達は、毎日夜明けに起きてベッドを整え、皿を洗い、床や洗面所の掃除をし、そして岩を運びました。

まさしく、岩を運んだのです。それは公正住宅法(訳注:1968年米国で、住宅の譲渡・賃貸の人種差別を禁じる法律)が成立した1960年代のことでした。
働き者の両親は街中心部にあった懐かしくも狭苦しい小屋から、森林地帯にある広く清潔な新しい集合住宅に黒人の(私達)家族が引っ越すことを選びました。
それは私達にとって新たな始まりでした。新居は郊外の同じような風景にあり、家の前は岩がごろごろして何もありませんでした。
誰のものでもない空間でした。
そこである土曜の朝、父は私たち姉妹を早くから起こし、岩をすべて取り除くようにと言いました。
父はそこに何とか芝を植え、郊外にふさわしい芝生の庭にして隣人たちをなだめようと決めたのでした。
それで、私は岩を運びました。一日中。

私はやせた14歳で、岩は重かったのですが、空は青く太陽は輝いていました。
そしてその仕事は(仕事というものはたいていそうですが)、底抜けに良いものでした。
一日の終わり、自分の影が長くなってくる時間にそこに立ってすっかりきれいになった庭を見ると、苦々しい思いではなく、にこっと笑顔がこぼれました。
「よくやった」父が言いました。
「ありがとう、パパ。パパもよくやったね」と私も言いました。

父が教えてくれた事のうち、第一はキリストと十字架にある満たしでした。
そして第二は働くのはすばらしい、ということでした。
年齢?そんなことは関係ありません。
私たちの若いことを良しとする文化の中では、年を取ることは悲しむべきこと、軽くあしらわれることです。
皺は恥ずかしく、白髪は隠すべきものと思われています。

はっきりしているのは、私たちの文化には出エジプト記の内容が反映されていないということです。
3章には、モーセが義父イテロの羊を飼ってシナイ山に登った記事があります。
彼は80歳でした。
けれども神は彼の年齢など気になさいませんでした。
むしろ神はモーセに目を留め、山にいた彼に恐らく最も優しい言葉で語りかけられました。
「履き物を脱ぎなさい」と。
どういう意味でしょうか。
イテロの羊を飼って時を費やすのをもうやめなさい。
聖でない土地で履き物をパタパタさせて歩くのをやめなさい。
そうではなく、私の前であなたの履き物を脱ぎなさい。
そして?
本来の仕事にかかりなさい。
たとえ信じることができなくても、全てをあなたが変えることができる、とモーセは語られたのです。

もちろんモーセは尻込みしました。
自分はふさわしくない、と答えます。
「彼らは私の言うことを信じず、私の声に耳を傾けないでしょう…私は口が重く、舌が重いのです」(出4:1、10)。
今日でもモーセの言葉は私達のほとんどに当てはまるでしょう。
自分を疑い、うろたえ、勇気のない姿が。

しかし、モーセが口にしなかった印象的なことがあります。
80歳でしたが、彼は決して「私は年を取りすぎているのではないでしょうか」とは尋ねませんでした。
彼は他のことを心配しました。話下手なこと。まとまりのない人々を導く能力。
しかも、若さとはかけ離れた83歳の彼の兄アロンと共に行くことを願ったのです。

モーセは年齢を心配することはありませんでした。
ならば、私達も心配する必要があるでしょうか?

私達の多くは、ある年齢に達すると立派な人になり目的を達成するのだと思っています。
そして人生の表舞台から身を引き、ゴルフコースや自宅の玄関で過ごし、何かをなすには年を取りすぎたと言うのです。
けれども、聖書には引退という概念がほとんどありません(例外は民数記8:24-25のレビ人の奉仕)。
年齢に関しては、神様は何も気になさらないようです。
年月の創造主として、神様は引退の日を数えるのではなく、「自分の日を数え」、
「知恵の心を得」るようにと言われます(詩篇90:12)。

聖書にはいわゆる「素晴らしき日々」を過ごす英雄たちがたくさん出てきます。
アブラハムとサラはそれぞれ100歳、90歳でしたが、約束の息子を生み、国民を育てました。
ノアは600歳で箱舟を作りました。
ザカリヤとエリサベツはバプテスマのヨハネの親となった時には「二人ともすでに年をとってい」ました(ルカ1:7)。
女預言者アンナもまた、「非常に年をとって」も宮で仕え、注意深くメシヤの到来を待ち望んでいました。
ついにイエスを見ても、彼女は働きをやめて引退したのではありませんでした。
そうではなく、ますます熱心に「エルサレムの贖いを待ち望んでいたすべての人に」この幼子のことを話しました(ルカ2:36-38)。

私達に託されたことは、アンドリュー・マーレ―が言うように「働きと果実を混同してはならない」ということです。
「天の国の果実を結ばない、キリストのためにすると思っている働きがたくさんあるかもしれない」のです。
働き者の父はこの真理を理解していました。
野望や利己的な関心から悪い動機でする働きは、御国の目的や油注ぎがなく、天的な喜びもない、ということを。

父は日曜日に私達姉妹を教会に連れて行き、人生の全ての日を神様に捧げるなら、神様があらゆる瞬間を素晴らしい時にして下さることを私達に知ってほしいと思っていました。
父は、大人の期間をものづくりをした「大工」を、ガリラヤ地方に向かい世界を変える30歳までそうして待った「大工」を、私達に知ってほしいと思っていました。
彼はいつも働かれました。
そして私たちに素晴らしい約束を下さいました。
誰でも彼を信じるものは「さらに大きなわざを行います」という約束です(ヨハネ14:12)。その「わざ」とは奇蹟です。

私達には岩を動かす以上のことができると彼は言われました。
「山を動かすことができます」(マタイ17:20)と。
どのようにしてでしょう?
イエス様は説明して下さいました。それは「わたしが父のもとに行くからです」(ヨハネ14:12)と。
この良い知らせは、キリストから私達に送られた聖霊が、私達を強め、たゆむことなく御国のために働き続けるために隠れた能力を明るみにされるということです。

私が知る最も高齢の女性は現在105歳ですが今なお活動的です。彼女はアドバイス(私にくれた最上のもの)と共にこの真実を実証しています。
「よく長生きする方法、それはあなたのペースで歩み続けることよ。」
それに付け加えて「忙しくしていなさい。ただし、聖霊様に働いていただきなさい」と言いました。

私は60代後半に差しかかっていますが、電話は鳴り続けます。私は感謝しながら受話器をとります。
私は喜びをもって応答します。なぜなら、年ごとに収穫はよいものになっていくからです。
なぜかですか?
それは神様がよい果実を私達皆の中に実らせてくださるからです。




Patricia Raybon(パトリシア・レイボン)はクリストファー賞を受賞した「My First White Friend(初めての白人の友だち)」、「A Muslim Daughter, Her Christian Mother, Their Path to Peace(ムスリムの娘とクリスチャンの母の平和への道)」などの著作で受賞歴を持つ著作家である。
この文章は「The Wonder Years: 40 Women Over 40 on Aging, Faith, Beauty, and Strength(すばらしい年月:40歳を超えたの40人の女性による年齢、信仰、美、力について)」(Leslie Leyland Fields編、Kregel Publications、2018年 www.kregel.com)から許可を得て転載されたものである。

Just Between Us 誌 2018冬号より翻訳     


Copyright 2018 Patricia Raybon. Translated from Just Between Us, 777 S. Barker Road, Brookfield, WI 53045


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