2017/06/20

「ここに来る前に死んでいます」(1)

犠牲と希望の証し   

エミリー・フォアマン
Emily Foreman

早朝、まだ辺りが静かな中、地域のモスク近くの道路に銃声が響きわたりました。
過激派アルカイダにより、若いアメリカ人宣教師ステファン・フォアマンは殺害されました。

キリスト教が禁じられている国に福音を伝える、という働きにエミリー&ステファン・フォアマン夫妻が神から召された時、二人はそれが命がけの犠牲を伴うものだとわかりました。
「ここに来る前にすでに死んだと思っています」と二人はよく話していました。

エミリーと4人の子どもが残されました。~夫を亡くした後も、イスラム教国で福音を伝えなさいという召しと共に。
夫ステファンの死、それは始まりでもなければ終わりでもありませんでした。
彼は無駄に死んだのではありませんでした。
ムスリムの人々への神の愛と夫がすすんで犠牲となったという事実に励まされ、エミリーと子どもたちは北アフリカでの宣教を続け、母国のクリスチャンたちが信仰の目をもってムスリムの人々を見ることができるように働いています。

*   *   *  


現地を訪れた時、夫の死について私たちが受けた最も深い慰めは、現地の友人たちが私たちの必要を考え、言葉をかけてくれたことでした。
友人たちも心を痛めていました。
なぜなら、自分の国の人物が自分の知り合いを虐殺し、知り合いの子どもは父を失い、その妻が未亡人となってしまったのですから。
友人たちは自分自身の感情と心の痛みと闘い、何とかして私たちに寄り添おうとしてくれました。
私も友人たちと共にいたいと切に思いました。

私たち家族は、親しくしていたアミルとジャメイラ夫婦をまず訪問しました。
彼らは駆け寄ってきてくれました。
アミルは家族の一人一人を抱きしめ、特に子どもたちを長い間抱きしめてくれました。
ジャメイラはすすり泣きながら、床に倒れそうなぐらいぎゅっと私に腕を回してくれました。

私たちの滞在中、アミルはステファンが殺された日の夜、雨の降る中でこの出来事をどう受け止めたかを離しました。
「僕の兄弟同様であった人は主の元に行ってしまった。しかし、僕たちは彼の遺産を伝えなければならない」
とステファンは強い口調で言いました。

それからしばらく口をつぐみ、静かな、しかしこれまで見たことのなかった勇気を持って私を見つめました。
「君も知っているように、僕は自分の命だけでなく、妻や子供の命をなくすのがこわかった。でも、今その恐れはない。
ステファンは死ぬほんの数日前に僕のところに来て、この同じ部屋で座っていた。
彼は熱があったが、声にはいつもに増して喜びがあり…」
少し切って彼は続けました。
「僕にこう話した。『アミル、僕はあとどのくらい生きられるかわからない。明日死ぬかもしれない。病気であれ過激派に殺されるのであれ、人生はとても短い。だから、まだ生きて息をしているうちに、神様に従わなければならない。死んでしまったら、もうやり直すことはできないのだから』」と。

その後も私たちは様々な人を訪問しました。
ムスリム・クリスチャンを問わず、どの友人も同じように涙を流しながら、ステファンが生前に語った言葉やしたことを話してくれました。
私はムスリムの友人が表す慰めや共感に、私は何度となく驚きました。

私の電話番号を知らないはずの多くの現地の人から、慰めの電話ももらいました。
「あなたの夫は、偉大な神の人でした」とその人たちは言いました。
「ムスリムの中には、彼に匹敵するほど偉大な人はいません。私たちの国は大切な人を失ったものです」と成功したビジネスマンの一人は私に話しました。

ある政府の役人が会いたいと言って来られました。
お茶を出した後、私を見つめ、彼は目に怒りを浮かべて言いました。
「どうして、あなたたち家族は、夫を殺した人物を赦すことができるのですか?
あれはムスリムではない。死刑に値する奴らなのです。」

私は、彼が私たち一家のために怒りを表してくれたことに感動しました。
そして、私たちはイエス様に従っており、イエス様は敵を愛し迫害する者のために祈るよう教えられたのだ、と話すことができました。
彼は黙って聞いていました。

とにかく、多くの人にはこのことが理解できないようでした。
「でも、どうやって赦すことができるのですか?」
「夫の命を奪った国に、どうして再び帰ってくることができたのですか?」
「赦し」という概念が、彼らには全くなじみのないもののようでした。
人々は純粋に驚き、当惑していました。

でも、ステファンの死はこの人々に深い印象を残したのです。
そして、今日でもまだ、私たち家族が赦しを示したことが人々の口にのぼっているのです。
(続く)


                その(2)→      その(3)→




当記事は、Emily Foreman We Died Before We Came Here, 2017 からの抜粋で、許可を得て掲載されたものです。
Just Between Us 誌 2017 夏号より翻訳     
Copyright 2017 Emily Foreman. Translated from Just Between Us, 777 S. Barker Road, Brookfield, WI 53045
Original title: We Died Before We Came Here


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