2010/09/14

準備はできていますか?~Good to go?~

              
              ジル・ブリスコー        



 最終目的地へのフライトを待つ間、私はスターバックスに立ち寄りました。飲み物を受け取って、これはラテですかと尋ねると、店員は「ええ、そうですよ。できています(good to go)からお持ちください」と言いました。彼女は、注文したものができており、私が必要なものを持っていけるということを言っていたのです。

 空港では、再度持ち物チェックを受けました。そして、検査官が「はい、ではどうぞ(good to go)通っていいですよ」と言いました。この人は、私の身体や持ち物すべてが大丈夫だということを言っていました。

 私は刑務所に向かう途中でした。毎年この時期には、テキサス州の刑務所で奉仕する「ディサイプルシップ・アンリミテッド(Discipleship Unlimited)」という団体のボランティアチームに加わっています。この団体は教会からの奉仕者を訓練し、国内で最も大きな刑務所の一つで3日間の「クルセード」を開催しています。私の務めは5回のチャペルでメッセージをし、可能ならば受刑者と共に祈り、許されるなら実際に手をふれ、ハグをする(もちろん女性に対してのみですが)というものでした。チームの中には独房や死刑囚の部屋に行く人もいます。



 私達の親友であるダラス&リンダ・ストローム夫妻は、この団体で公式に何年も働いてきました。ダラスはガンと闘っていました。もうホスピスに移り、私がそこに行った時、彼はチームの人たちや親しい友達に別れのあいさつをしていました。

 涙ながらに話し、パウロがエペソの人たちに別れを言う使徒20章の記事を苦しい気持ちで読みながら、私は36-38節に来るのを待っていました。それこそが彼が行こうとしている道だと知っていたからです。「こう言い終わって、彼(パウロ)はひざまずき、みなの者とともに祈った。みなは声をあげて泣き、パウロの首を抱いて幾度も口づけし、彼が、『もう二度と私の顔を見ることがないでしょう。』と言ったことばによって、特に心を痛めた。」何ということでしょう。チームのメンバーやストローム夫妻の親しい友人の幾人かは、自分たちがエペソの人たちと共に海岸に立っているように感じました。

 私は身体的にも霊的にも巨人であるこの人を見ながら、神様に彼と知り合えたこと、そして今の瞬間があることを感謝しました。スポルジョンの言うところの「新しいエルサレム」に座っている神の人と話せたのはなんと名誉なことでしょうか。

 私が個人的に別れを述べた後、彼は満面の笑みを浮かべ、「準備完了(good to go)」であることを示してくれました。それは疑いの余地がありません。彼は私に、拘置所にいる愛する男性たちに、自分が行って話すことができないと伝えてほしいと頼みました。また、彼らの愛、祈り、涙への感謝を伝えるように、また、イエス様のことを聞いた人たちには神様を知り愛して従ってほしいということも頼みました。彼はどんなに男性たちのことを思っていたことでしょうか。これが私の任務でした。何について話すべきかと彼に尋ねると、男性たちを養ってほしいということでした。男性たちが自由に集まることは制限されており、どうしたらよいのかを知りたがっているということでした。「主が語ってくださるよ。彼らは空腹でたまらないんだ」と彼は言いました。



私達が刑務所で何ができるかは、全て各刑務所の官吏たちにかかっています。去年、私はこの特別な場所に初めてきて、受刑者たちが賛美チームを結成して賛美をリードしているのに驚き、彼らがカベに描いたイエス様の絵に感動しました。また、信仰書や聖書のある図書室もありました。アルファコース(聖書の学び会)が地元の教会のチームによって開催され、男性たちが毎週主に自分の人生を明け渡していました。ダラスがチャペルに来たときには、男性たちに教え祈ることができました。彼らに自分が深刻な病だと話した時には、男性たちは看守に座席を立ち彼のところで祈れるように頼みました。そして看守はそれを許可してくれました。その光景はすばらしく、女性の刑務所でも報告されました。

 でも今年は違いました。「看守の異動」が行われ、壁画は塗り消され、バンドは解散し、図書室はなくなっていました。「クルセード」の前夜、私達のチームはそのことで長い祈り会を持ちました。翌日、ストローム夫妻の働きにとても好意的だった官吏がリンダに電話をくれ、メッセンジャーとバンドを男性の刑務所に送ってもよいと言ってくれました。チームは「準備完了(good to go)」となりました。

 「でも主よ、一体誰がこのようなところにふさわしいでしょうか」刑務所に着き、中に入るさまざまな手続きをふみながら、私は落ち着かなくて主に尋ねました。「一体1時間半の間、何を語ればよいというのでしょうか。小グループになることもできません。入所している人たちと会話のやりとりをすることもできません。」



 舞台に座って、チャペルが一杯になるのを見ながら、私はパニックに陥りました。去年のことを考えてみました。私は何を話したかしら?思い出せませんでした。もし同じことを話してしまったらどうしよう。それは恥ずかしいことだわ。もし思い出せたら、そこから続きを話せるのに。賛美チームがワーシップを歌う間も、私は口をつぐんだままでした。男性の受刑者たちが立ち上がって主を礼拝したそうで(許可されていません)、その場で手を上げたりひざをつういたりしている(許可されていました)のを見ました。胸が痛みました。「心の中では立ち上がってね。神様は見ておられるから」と心で彼らに語りました。

 「神様、私は何を語ったか知る必要があります」と私は必死に祈りました。なぜかわかりませんが、もしわかったらヒントが与えられるだろうと思いました。実は、なぜかそうだと思いこんでいたのです。けれどもどうやったら思い出せるでしょうか。去年のそのときから今まで、いったい何百のメッセージを語ってきたことでしょうか。



 突然、後ろに近い席のヒスパニック系の男性と話している看守が目に入りました。その男性は私を指差して、看守に何かを渡していました。看守は座席のそばを歩き、舞台の方に来て、私にその男性の聖書を手渡しました。それは大きく、ページが折られ、そこらじゅうに書き込みがしてありました。私が顔を上げると、男性は満面の笑みを浮かべて天を指差しました。「あなたのサインがほしいそうですよ」と看守が言いました。

 表紙を開くと、去年の私のメッセージが、きれいな字で簡潔にメモしてあったのです!私は顔を上げて主にあるその兄弟に、「ありがとう、言葉にできないくらい感謝よ」と言いました。そのメモを読み、私は何を語るべきかをはっきり悟りました。

 10分後、私は立ったまま、「1時間半もですか、主よ。私はノートを持っていないのです。私にどれほどノートが必要かご存知でしょう」と思っていました。

 「時間が足りないくらいだよ」と主が言われるのがわかりました。そして、「私はあなたに聖霊を与えたのだよ。準備は完了している(Good to go)!」とも。聖霊以上に私にとって必要なものがあるでしょうか。



 私はダビデ王の話をしました。5つの滑らかな石というおもちゃのような物で、若いダビデは20歳にもなる前に大男を倒しました。その後、バテシェバとのエピソードへと話を進めました。誘惑とそれが大きくなるまでの段階、つまりダビデが霊的な訓練を怠り、気が緩んだことが、不従順などにつながったということを話しました。私はバテシェバについても述べました。彼ら二人でその情事を楽しんだのですから。バテシェバは孤独で退屈しており、夫は不在だったのです。彼女は喜んでダビデの所に行ったのであり、ダビデもバテシェバもやめなかったのです。そして大きな損失が生じたのでした。

 その後、詩篇51篇に移り、残りの時間はダビデがすばらしい勝利を得た、悔い改めの詩篇について話しました。全ての罪は「大きな」罪です。でも神にとって許すことのできないほど大きな罪はありません。そして罪の後にも人生があります。神の心にかなった人と言われたダビデでさえ、一夜の欲望に負けて十戒のうち7つを破ってしまいましたが、彼は「打ち砕かれ悔いる心を 神よ、あなたは侮られません。  わたしはあなたの道を教えます あなたに背いている者に 罪人が御もとに立ち帰るように」と言って結んでいます。

 最後には長い祈りの時を持って終わりました。私は講壇を去りましたが(それ以外に方法がなかったので)、見るとすぐには忘れられないような光景がありました。こつこつと聖書にメモを取っていた、そのヒスパニック系の男性は、独房に帰っていくとき私を見て言いました。「マザー、ありがとう!」彼の笑顔はなくならないでしょう。彼も準備完了(good to go)でした。



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編集者注:ジルが刑務所で奉仕をした直後、ダラス・ストームは主のみもとに帰った。 Discipleship Unlimited について詳しくは liferow.org. を。

ジル・ブリスコー(Jill Briscoe)は Just Between Usの主筆。また、ワールド・リリーフやクリスチャニティ・トゥディ誌の理事も務める。世界的に有名な説教者でもある。彼女と夫ステュアートには3人の子供と13人の孫がいる。



Copyright 2008 Jill Briscoe. Translated from Just Between Us, 777 S. Barker Road, Brookfield, WI 53045.



 

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